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札幌高等裁判所函館支部 昭和24年(を)206号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(要旨)

▽記録を閲するに、原判决において事實認定の證據とした被告人等の檢事に對する各供述調書近藤忠吉の檢事に對する供述調書、被告人川村由太郞の司法警察員に對する第一乃至第三回供述調書、被告人野村長三の司法警察員に對する第一、第二回供述調書、被告人北村義雄の司法警察員に對する第一、二回供述調書に付、原審第六回公判期日に於て、檢事の證據調べ請求に對し、被告人川村由太郞の弁護人長谷毅、同野村長三の弁護人白木豐壽、同北村義雄の弁護人赤井力也より該供述は任意にされたものでない疑ありとして異議の申立を爲したが、原裁判所は之を却下し、その取調を爲したことが明らかである。よつて、先ず右被告人等の檢印又は司法警察員に對する各供述調書の證據能力に付按ずるに、此の點に付刑訴法は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは捺印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事實の承認を内容とするものであり、且つ該供述が任意にされたものでない疑のない場合に於てのみ採つて以て證據と爲し得るものと定め(第三二二條第一項)又裁判所は豫め該供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければ之を證據とすることは出來ない旨規定している(第三二五條)然して、本件被告人等の檢印又は司法警察員に對する供述は被告人等に不利益な事實の承認を内容とするものであることは問題のないところであるが、それが果して任意にされたものでない疑のないものか否かについては弁護人等主張の如く該供述の内容が公判期日に於ける供述と異るからといつて直ちに該供述は任意にされたものでない疑ありと速斷することは出來ない。若し斯く解するときは被告人は前供述を飜すことにより、容易に前供述の證據能力を失わしめることが出來、刑訴法が之に證據能力を認めたことは無意味となるであらう。のみならず、該各調書の末尾には『右の通り録取して聞かせたところ誤のないことを申立て署名捺印した』との記載があり、且つ供述者の署名捺印があるから被告人等が公判延で讀み聞けがなかつたといつても、たやすく之を措信するわけにはいかない。

(ニ)又弁護人等は右證據に付任意性の調査がなかつたと主張するけれども原審第六回公判調書の記載によれば『判事は、檢事に右各書類を各被告人に提示させ被告人等の署名捺印なることを確かめた上右各弁護人の異議の申立を却下し云々』と記載されて居るに徴しても窺知され得る如く原裁判所は刑訴法第三二五條所定の調査を爲した上で該供述が任意にされたものでない疑がないと認めて之を證據として採用したものと見るのが妥當である。

(ハ)次に近藤忠吉の右供述調書並びに共犯者たる被告人等相互間の關係における他の被告人の檢事に對する右供述調書が刑訴訟法第三二一條第一項第二號後段所定の供述調書であることは勿論である。然して該供述調書は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情况存するときに限り之を證據とすることができる(同項ただし書)のであるから裁判所が該供述調書を證據とするにはその果して右の要件を具備するか否かに付あらかじめ之を調査しなければならない、然して之を調査するに當つては右供述の内容を對比檢討し、又前の供述の行われた状態、法廷における供述の態度其の他諸般の事情を綜合して之を判定すべきである。前示公判調書に依れば前述被告人等の檢事に對する供述調書に對する調査の外右近藤忠吉の檢事に對する供述調書に付弁護人等の前述異議申立に對して『判事は近藤忠吉の供述が任意に爲されたものであることを調査する爲該供述調書中冐頭に近藤忠吉が默祕權を告げら〓た旨及び末尾に同人が供述の誤ない旨申立てた署名捺印した旨の記載あることを確かめた上右各弁護人の異議の申立を却下し云々』と記載せられているのみで、公判期日に於ける同人等の供述よりも檢事の面前に於ける前の供述を信用すべき特別の情况ありや否やに付調査した旨の記載はないけれども、弁護人等の異議の申立があつたに拘らず之を却下し證據として採用したのは結局原裁判所は上述の如き調査を爲した上で右の要件を具備するものと認めて之を證據として採用したものであることは右公判調書の記載の全趣旨に徴し明かである。

よつて此の點に關する各論旨は理由がない。

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